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(c) 2005 Toshimitsu Kawano 川野俊充

May 12, 2000

恋愛法

インターネットの世界に既存の法律を適用することに無理があり、サイバー法なる新しい枠組みの必要性が叫ばれて久しい。
しかし、新しい事象でなくても法律の目で切り取ると滑稽なのものに人間関係、特に恋愛関係がある。

以下友人のメールからの引用。出典不明。

18 誰もいない砂浜での鬼ごっこ
恋愛最高裁平成3年12月18日大法廷判決
(平成2年(ウ)第382号恋愛差止請求事件)(恋集53巻578頁)

<事実の概要>
季節は秋。XとYは人気のない海岸に並んで座り、黙って海を見つめている。聞こえるのは波の音だけ。夕日に染まるXの横顔を見ているうちに、Xへのいとおしさで胸が一杯になったYは、突然Xの頬を指で突つき、海に向かって走り出す。「やったな」と言いながら、追いかけるX。「アハハハ・・・。」ととってつけたような明るい笑い声を上げながら逃げるY。二人の距離は次第に縮まり、とうとうXはYを捕まえる。腕をつかんだまま、Yの目をじっと見つめるXは、急にまじめな表情に。そして激しいくちづけ。そんな恋愛名場面を見ていたZは、X・Yの行動は恋愛法215条にいう「目に余るもの」であるとして、恋愛差止請求を起こした。第一審は例えX・Yの行動が目に余るものであるとしても、Zはそれを微笑みながら見ていたのであるから、差止請求を起こすのは信義則に反するとして原告の請求を棄却。原審は、Zはたまたまその場に居合わせただけであり、その請求には何ら理由がないとしてZの訴えを棄却した。

<判旨>
破棄差戻。「恋愛法215条にいう「目に余る」とは、対象となる恋愛行動・場面を当該恋愛人に見せた時に二人が恥ずかしそうにうつむきながら膝を突つきあうか否かなどにより決せらるべきであり、その審議を尽くさずにした原審の決定には看過せざるべき誤りがある。」

<解説>
恋愛法215条は、「何人も恋する二人を妨げることを得ず。但し、それが目に余るものであるときはこの限りに非ず」と定めるが、この「目に余る」とは如何なるものを言うのかについて、学説上の争いがあった。主観説は、当該恋愛人の目に余ることを言うと解するのに対して、客観説の立場からは、当該恋愛人以外の者の目に余るかどうかで判断するべきであるとされ、電車内におけるイチャツキに関する恋高判昭和56年2月3日は、「本件差止請求の対象たる行為は、社会通念上目に余るものと認めることができる」と判示し、客観説の立場に立った。客観説に対しては、恋する二人の保護に欠けるとの批判がなされ、客観説の中にも、目に余るものであるかどうかを国民投票によって決める(山路紀雄「シャララ恋愛法」)、恋愛差止請求をなし得る者を恋愛経験5人以上のものに限る(神田寛次「恋愛差止の諸相」ジェリ374号31頁)などの見解があるが、いずれも取り得ないであろう。215条但書の趣旨は、恋する二人はしばしば「恋に恋する」という状態に陥り、それにより二人の恋愛が歪んだものとなり、ある日ふと疑問を感じて別れに至ることをパターナリズムの見地から防止したものであると解するのが合理的であるから(赤木春彦「渡る世間の恋愛法」)、恋愛当事者自らの目に余る態様のものであるときに差止請求を認めるのが相当であると思われる(差止請求権者の範囲については、本書17事件参照)。なお、かつては但書に当たるような場合に、不法行為に基づく損害賠償を提起することができるかについて議論されたが、恋最判昭和23年4月24日は、これを認めなかった。215条の「妨げる」という文言から、また、賠償額算定が事実上不可能であることを考えれば、不法行為による損害賠償請求はできないと解するべきであろう。


53 「二人の距離」と恋愛債務
恋愛最高裁平成10年2月10日大法廷判決
(平成7年(オ)第596号恋愛所有権請求事件)(恋愛タイムズ20巻49頁)

<事実の概要>
訴外Aはかねてより親しかった訴外B(平成6年死亡)の長女Xを平成6年4月頃より自宅に住まわせることにした。Aの長男である訴外C、次男Yは時折Aも交えて激しい恋の鞘当てを繰り返したが、若さと勢いに勝るYが、二人きりの留守番、学校を抜け出しての遊園地でのデートなどを通じてXの恋慕の情を得た。XはYが自分の物であるとの確信を得て、周囲もXはYの物であるとの状況を認め引き下がるに至ったが、Yはその移り気な性格から、地方からの転校生訴外Dに対し課外活動を通じて激しくひかれるようになった。YがXをなおざりにし、Dと喫茶店、図書館などでの淡い恋愛に耽るようになったため、XはYに対し恋愛債権の存在を主張、「あの頃のあなた」の回復を求めた。これに対してYは、Xに対する想いはもっぱら身寄りのないXへの同情であり、一方Xとの肉体関係といえば手が意図せずに触れた程度であり、「二人の距離」はまだと遠く恋愛関係にあったとはいえないことを主張した。第一審は、Yの中に、恋愛法246条にいわゆる恋愛の三様態(不眠・目眩・動悸)が存在した事実はなく、二人の春はまだ遠かったとして原告の請求を棄却。原審は、楽しかった二人の想い出とそれによって二人の距離が急接近した事実を認め、恋愛関係があったとしたが、もはやYの気持ちは動かしがたく、「二人の時刻−とき−」は還ってくることがないため、訴えの利益はなものとしてXの訴えを棄却した。

<判旨>
上告棄却(但し8対7の僅差)。「請求の対象となりうる恋愛は、恋愛法225条により各号の条件に該当するものでなければならないが、形式的要件の他、それ自体保護さるべき恋愛というためにはなお実質的な基準を満たさねばならない。本件において、XとYとの肉体関係は認められないものの、YがXに接吻を求めた事実は、Xにより拒まれはしたものの、そこに恋愛はあったものと言い得べく、Yが、本件恋愛を事実無根とする論拠は存しない。但し、前記のような二人の距離の急接近はとかく強い恋愛の認識を与えやすいのであって、その事のみに注目しすぎると請求に足る恋愛事実であるかどうかとの基準を誤る危険性がある。本件における恋愛事実の存在は認められるものの、それが恋愛債権債務関係としての性質を備えるに至るまでの当該恋愛人の「距離」の近さがあったかどうかは微妙である。しかし、ここにおいて考察するに、結果的にXはYを繋ぎ止めることができなかったのであるから、「あと一押し」が足りなかったというべきであり、その点に関してはブスだが耳年増の女友達の悪知恵を受け入れるなど努力が欠けたともいえる。一方、Yの行為も信義誠実の原則に反するものとまでは言い得ない。従って、本件恋愛債権の対象とされるべき事実は存在するものとは言え、それが債権として成立する実質はいまだ有していなかった、いわば「恋の見切り発車」による安易な恋愛認定であったと言うべきである。よって、Xの請求を認める理由は存しない。」

<解説> 省略


72 恋愛法185条違反の効果
恋愛最高裁平成5年9月30日大法廷判決
(平成4年(ク)第67号恋愛債権確認請求事件)(恋愛時報53号211頁)

<判旨>
上告棄却。「Xは肉体労働に従事しており(いわゆる総合商社)、勤務状況も朝から晩まで、しかも隔週週休2日であるというのであるから、Yとの性行為に応じるのも相当な負担ではあるが、これを奇貨として前戯もままならず僅か30分余りでコトを終えるというのは黙認し得ない。恋愛法185条に「親しき仲にも前戯あり」と定める趣旨は、恋愛契約の柱ともいうべき性行為を意義あるものとするべく前戯を必要不可欠なものとして法がこれを要求したと解するのが相当であるから、Xが申し訳程度にYの乳房を揉むにとどまり、後は入れて、腰振って、射精しておしまい(尚、第一審の認定した事実によれば腕枕をして髪を優しく撫でてあげる事もせずおもむろに煙草に火をつけた)というのは、Yに対して「前戯なき戦い」を挑むものであると同時に、恋愛法ひいては恋愛そのものに対する重大な違背行為というべきである。更には、Xになお恋愛債権の存続を認めるのは公序良俗に著しく反し、到底首肯し得ない。


43 事情変更による解除
恋愛最高裁平成4年11月21日大法廷判決
(平成2年(キ)第384号恋愛損害賠償請求事件)(恋愛時報38号97頁)

<事実の概要>
XはA会社に勤務するOLであったが、何かにつけて「君たち新人類は・・・」と苦言を呈するアナクロな部長、スポーツ新聞しか読まない若手男性社員、パンツ派とスカート派に分かれて派閥抗争を繰り返す他のOL達に囲まれた日々に不満を募らせ、不動産鑑定士、カラーコディネーター、CPA、赤ペン先生などの資格を取得するも、その欠落感を拭うことはできず、彼女の望む何か(形而上のものではあるにせよ)は彼女が手を伸ばす、そのすぐ先にあるのだった。このような状況でXは輸入車販売業を営むYとふとしたきっかけで知り合ったのだが、会う機会を重ねるうちに、「確かにカッコ良くはない。でもこんな人と一緒になれば私の資格も生かせるわ。この人も変わるかもだし。この恋、ものにしなくちゃだわ。」と思うに至り、二人の蜜月は始まった。しかし、1年半後、Yの営む会社は経営危機に陥り、2度目の不渡りを出して倒産するに至った。XはもはやYと一緒にいても二人にとって意味はないと、一方的に別れを告げた。これに対しYは、Xの恋愛契約解除は無効であるとして、契約解除の取り消しを求めた。第一審、原審共にXによる解除を認めることは恋愛関係の安定性を著しく害し、「恋に敗れた者」或いは「恋愛難民」の増加を引き起こすものであるから、公序良俗に反し認められない、としてYの請求を認めた。そのためXにより上告。その中でXは本件恋愛契約成立の経緯、現在の状況に鑑み、「虚しく恋愛の存続を認めるが如きは事情の変更による恋愛関係の是正に関する解釈を誤るもの」と主張した。

<判旨>
破棄自判。「原審による事実認定の下で恋愛当事者がなおこの長期にわたる不安定な契約の拘束により免れることはできないと解するのは、信義の原則に反するものと言うべく、従って、このような場合においては恋愛当事者はその一方的意思表示により恋愛契約を解除できるものと解するのが相当である。」

<解説>
この判決は、事情変更による恋愛契約の解除を認めたリーディングケースである。事情変更の原則とは、恋愛契約締結後、その基礎となった事情が恋愛当事者の予見し得ない事実の発生によって変更し、当初の恋愛契約内容に恋愛当事者を拘束することが極めて苛酷になった場合、契約の解除または改訂が認められる、という法理である。我が国の恋愛法典にこの法理を一般的な形で認めた規定はない。むしろ、立法当時の時代思想は「恋愛は守らなければのならない」原則に傾いており、事情変更の原則の承認には消極的であったと言われる。しかし判例は、社内恋愛における男性側のリストラ、母親が勝手に応募したところミス・コンでグランプリに選ばれたなどの事例で類似の思想を承認してきたと見る余地もあることが指摘されている。また、さまざまな研究書(たとえば後藤恒子「Allez!事情変更の原則」)も相次いで著され、事情変更に関する理論が整えられた。現在ではその要件として次の4つが挙げられる。つまり、?恋愛契約成立当時の基礎とされた客観的状況に著しい変更が生じたこと、?恋愛当事者双方がその事情の変更を予見し得ず、かつ、予見し得なかったこと、?当事者の責めに帰すことのできない事由により生じたこと、?事情変更の結果、当初の恋愛効果を維持することが著しく信義則に反すること、である。判例上、この原則に関する一潮流を形成してきたのは、結婚を前提とする恋愛契約の領域であった。この問題を最初に扱った恋愛法院判決は、婚約成立後、男性が水子を二人背負うという事情に至ったとしても、恋愛契約当事者は「当初の約旨に従い信義を重んじて恋愛契約を履行すべき義務あるものにして黒い過去の判明を以ってその履行を拒否する事由と為すを得ず」と説き、事情変更の原則に消極的な立場を取った。そして、本判決は、「信義則」を根拠として事情変更による解除を認めたところに看過し得ない特徴があると言えよう。


Posted by toshi at May 12, 2000 02:14 AM | TrackBack
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